インプラントの種類とその特徴!構造・形状・素材・表面処理・手術に分けて解説
2025.02.25更新
「インプラントには種類があるの?どのような違いがあるのか知りたい」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
インプラントは構造、形状、素材、表面処理、手術法の5つの観点で分類され、それぞれに独自の特徴と適応があります。
構造では1ピースタイプと2ピースタイプがあり、形状ではスクリュータイプが主流で、素材はチタンとジルコニアが選択可能です。
これらの種類は患者さまの骨質や治療部位、審美的要求によって最適な選択肢が変わります。
この記事では、インプラントの構造や形状、素材、表面処理、手術法による種類の違いと特徴について解説します。
【構造】インプラントの種類とその特徴
インプラントの構造は大きく分けて、「1ピースタイプ」と「2ピースタイプ」の2種類に分類されます。以下、インプラントの種類とその特徴について解説していきます。
種類 | 特徴 |
---|---|
1ピースタイプ | インプラント体とアバットメントが一体化、シンプルで治療費が安い |
2ピースタイプ | インプラント体とアバットメントが分離、高い適応性と安定性 |
1ピースタイプ
1ピースタイプは、インプラント体とアバットメントが一体化された構造を持つのが特徴です。
部品点数が少なくシンプルな構造のため、治療費を抑えられるという経済的なメリットがあります。
手術時に歯肉を貫通させて埋入する特徴から、治癒期間中もアバットメント部分が口腔内に露出した状態が続き、二次手術が不要となります。
一方で、治癒期間中の清掃管理が困難で感染リスクが高まる可能性があり、慎重なケアと定期的なメンテナンスが必要となる点がデメリットです。
また、顎の骨が薄い場合には使用できないという難点もあります。複雑な症例では適応が制限される場合もあり、症例選択が重要です。
2ピースタイプ
インプラント体とアバットメントが分離された構造となっているのが、2ピースタイプの基本的な仕組みです。
世界中の歯科医院で採用されており、豊富な臨床データと高い信頼性があるとされています。
一次手術でインプラント体のみを埋入し、治癒期間を経てから二次手術でアバットメントを装着する2回法が一般的です。
治癒期間中はインプラント体が歯肉下に完全に埋もれているため感染リスクを軽減できます。
また、アバットメントの角度や形状を症例に応じて選択でき、高い適応性を持つのが大きな特徴で、審美的な要求にも対応しやすくなっています。
一方で、2ピースタイプは2回の手術が必要となり、患者さまへの身体の負担が大きい点がデメリットです。
部品コストや治療期間は増加しますが、長期的な成功率と安定性に優れているため、多くの症例で選ばれています。
【形状】インプラントの種類とその特徴
インプラントの形状は骨との結合面積や初期固定力に大きく影響するため、患者さまの骨質や治療部位に応じた適切な選択が重要です。
主要な形状として「スクリュー」「シリンダー」「ブレード」「バスケット」の4種類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
スクリュータイプ | らせん状の溝で優れた初期固定力、現在最も普及している形状 |
シリンダータイプ | 円筒形で低侵襲、軟らかい骨質では安定性に課題 |
ブレードタイプ | 平たい板状、薄い骨幅に対応可能だが現在はほとんど使用されない |
バスケットタイプ | 網目状構造、骨組織の内部成長を促進するが現在は採用されていない |
スクリュータイプ
スクリュータイプは、らせん状の溝(ネジ山)が刻まれた形状を持つのが特徴です。現在最も普及している形状となっています。
ネジ込み式の埋入により、優れた初期固定力を発揮し手術時の安定性が高いことが大きなメリットです。
骨質が軟らかい部位でも確実な固定が期待でき、幅広い症例に対応できます。
また、表面積が大きいため骨との結合面積を確保しやすく長期的な安定性にも優れており、高い成功率を実現している点も特徴の1つです。
現在では改良されたデザインにより、さまざまな骨質や部位に対応できる多様なバリエーションが開発されています。
シリンダータイプ
円筒形の滑らかな表面を持つのがシリンダータイプの基本的な構造で、初期のインプラント治療で多く採用されていました。
埋入時の骨への圧迫が少なく、組織に対して低侵襲な手術が実現できるという特徴があります。
骨密度の高い部位では良好な結果が得られることもありますが、軟らかい骨質では安定性に課題があることが明らかになっています。
初期固定力がスクリュータイプに比べて劣るため、治癒期間中の管理により注意が必要です。
歴史的には重要な役割を果たしましたが、現代の治療においてはより優れた形状に置き換えられているのが実情です。
ブレードタイプ
平たい板状の形状を持ち、薄い骨幅の部位に対応できるのがブレードタイプの特徴です。過去に一定の需要がありましたが、現在ではほとんど使用されていません。
骨幅が不足している症例において、骨造成を行わずに埋入できるメリットがありました。
しかし、応力集中により骨吸収が起こりやすく、長期的な安定性に問題があることが後に判明しました。
痛みや腫れを発生させたり、埋め込んだ部分が炎症を起こしたりなど、ブレードタイプ特有の課題点があったのです。
現在ではブレードタイプを選択する必要性は減少し、より安全な治療法が確立されています。
バスケットタイプ
バスケットタイプは、骨組織の内部成長を促進する網目状の構造になっています。特殊な形状により骨との機械的な結合を期待できるというメリットがありました。
骨質が非常に軟らかい部位や特殊な症例において検討されていましたが、現在ではブレードタイプと同様にほとんど採用されていません。
製造工程が複雑でコストが高く、清掃性にも課題があることが明らかになりました。
【素材】インプラントの種類とその特徴
インプラントに使用される素材は生体適合性と耐久性が最重要視され、主に「チタン」と「ジルコニア」が選択されています。以下、それぞれの素材の特性について解説します。
種類 | 特徴 |
---|---|
チタン | 最も広く使用される素材、優れた骨結合性とアレルギーリスクが低い |
ジルコニア | 白色セラミック、審美性に優れ金属アレルギーのリスクがない |
チタン
純チタンまたはチタン合金は、現在のインプラント治療で最も広く使用されている素材です。骨との結合性に優れ、アレルギー反応のリスクが極めて低いという安全性があります。
軽量でありながら高い強度を持つため長期間の使用に耐える耐久性があり、腐食に対する抵抗性も非常に高いのが特徴です。
インプラントに採用されるチタンには、大きく分けて「純チタン」と「チタン合金」の2種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
▼純チタンとチタン合金の特徴
種類 | 特徴 |
---|---|
純チタン | 生体親和性が高く、経年劣化しにくい |
チタン合金 | 強度は高いが生体親和性が低い |
現在でも技術革新が進められ、より優れた特性を持つチタンの開発が進められています。
ジルコニア
白色セラミックの一種であるジルコニアは、金属アレルギーのリスクがない非金属素材として注目されています。
天然歯に近い白い色調を持つため、審美性を重視する症例で選択されることが多い傾向にあります。
生体適合性にも優れ、金属イオンの溶出がないため歯肉の変色や健康への悪影響を心配する必要がなく、強度面でもチタンに劣らない特性を示すのが利点です。
ただし、チタンと比較すると費用が高く、対応できる歯科医院が少ないというデメリットがあります。
加工が困難で製造コストが高いため、治療費がチタン製より高額になってしまうのです。
【表面処理】インプラントの種類とその特徴
インプラント表面の処理方法は骨結合の速度と質に直接影響します。ここでは、「サンドブラスト処理」、「酸処理」、「酸化処理」、「機械研磨処理」の特徴について解説します。
種類 | 特徴 |
---|---|
サンドブラスト処理 | 微細粒子で表面に凹凸を作成、骨細胞の接着と増殖を促進 |
酸処理 | 強酸で微細孔を形成、骨結合の初期段階から活発な細胞活動を促進 |
酸化処理 | 酸化チタン層を形成、長期間の優れた生体適合性を実現 |
機械研磨処理 | 滑らかで均一な表面、細菌付着を抑制しインプラント周囲炎を予防 |
サンドブラスト処理
微細な粒子を高圧で吹き付けることにより表面に凹凸を作り出すのが、サンドブラスト処理の基本的な原理となっています。
粗糙化された表面で骨細胞の接着と増殖が促進され、結合力の向上が期待できます。骨との接触面積を最大化でき、処理後の表面は均一な粗さを持つのが特徴です。
比較的簡単な処理方法でありながら、高い効果が期待できます。
コストを抑えながら効果的な表面改質を実現できる実用性の高い処理法として評価されています。
酸処理
強酸を用いてインプラント表面を処理し、微細な孔を形成するのが酸処理の特徴的なメカニズムです。
塩酸や硫酸などの強酸により、表面に無数の微細孔が作られ骨細胞の侵入を促進します。
表面改質によって骨結合の初期段階から活発な細胞活動が期待でき、治癒期間の短縮にも寄与し、酸の種類や濃度処理時間を調整することで多様な表面性状を作り出せるのが強みです。
サンドブラスト処理と組み合わせることで、マクロとミクロ両方の表面構造を同時に獲得できます。
近年では処理条件の最適化により、さらに効果的な骨結合促進効果を実現する技術が開発されています。
酸化処理
酸化処理は、インプラント表面に酸化チタン層を形成させることで、生体適合性の向上を図るのが目的です。
陽極酸化法や熱酸化法などの手法を用いて、厚く安定した酸化膜を人工的に作り出しています。
形成された酸化層は生体内で安定した状態を維持し、長期間にわたって優れた生体適合性を発揮します。
また、酸化膜の厚さや結晶構造を制御することで、骨結合特性を細かく調整することも可能です。ジルコニアアバットメントとの組み合わせで審美性も向上し、機能性と美観の両立を図れます。
機械研磨処理
精密な機械加工により滑らかで均一な表面を作り出すのが、機械研磨処理の基本的なアプローチです。
回転工具や研磨材を用いて表面の凹凸を除去し、鏡面に近い仕上がりを実現します。
滑らかな表面は細菌の付着を抑制し、インプラント周囲炎の予防に有効とされ、特にアバットメント部分ではプラークの除去のしやすさが重要です。
ただし、骨結合の面では粗糙化処理に比べて接触面積が小さく結合強度で劣る場合があります。
審美領域では金属光沢が透けて見える可能性もあるため症例選択が重要となり、慎重な判断が求められます。
【手術】インプラントの種類とその特徴
インプラント手術の方法は大きく「1回法」と「2回法」に分類され、それぞれ異なる治療アプローチを採用しています。
患者さまの骨質や治療部位の審美的要求などを判断して適切な方法が選択されます。
種類 | 特徴 |
---|---|
1回法 | インプラント埋入と同時にアバットメント装着、手術回数が少ない |
2回法 | インプラント体のみ埋入後に二次手術、感染リスクを最小限に抑制 |
1回法
インプラント埋入と同時にアバットメントを装着し、歯肉を貫通させた状態で治癒を待つのが1回法の基本的な流れです。
1ピースタイプと2ピースタイプのインプラントで採用される方法です。手術回数が1回のみで済むため、患者さまの負担が軽減され、治療期間の短縮にも期待できます。
即座に仮歯を装着することも可能で、特に審美領域では大きなメリットとなります。
ただし、治癒期間中にアバットメント部分が口腔内に露出することから、細菌感染のリスクが高まる可能性がある点には注意が必要です。
骨質が軟らかい場合や感染のリスクが高い症例では慎重な適応判断が必要になります。
2回法
一次手術でインプラント体のみを埋入し、完全に歯肉下に埋没させてから治癒を待つのが2回法の特徴です。
治癒期間後に二次手術でアバットメントを装着するため、感染リスクを最小限に抑えられます。
骨結合期間中、インプラントが外部環境から完全に遮断される点が特徴です。安定した治癒環境が確保され、軟らかい骨質や複雑な症例でも安全性が高い傾向にあります。
ただし、手術回数が2回必要で治療期間も長くなるため患者さまの負担は増加し、スケジュール調整も必要です。
骨の量が少なかったり、骨移植が必要だったりする場合に2回法が行われます。
まとめ
この記事では、インプラントの構造や形状、素材、表面処理、手術法による種類の違いと特徴について解説しました。
インプラントには多様な種類があり、患者さまの骨質や治療部位、審美的要求に応じて最適な組み合わせを選択することが重要です。
現在では2ピースタイプのチタン製インプラントが主流となっており、表面処理や手術法の選択により治療の成功率向上が期待できます。
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