近年、成人を迎えてから歯列矯正を始める方が増えています。
しかし鼻の下が伸びたりほうれい線が深くなったりと、治療による見た目の変化を気にされる方もいらっしゃいます。
そこで今回は、成人矯正において顔が変わってしまうリスクや予防法について解説します。
40代で歯列矯正を行うメリットも紹介しますので、不正歯列にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
1.見た目の変化が起こるリスクと予防法
歯列矯正を行う際は、主に第一小臼歯(犬歯のうしろの歯)の抜歯を伴うのが一般的です。
抜歯をするのは、歯を並べるための骨が歯よりも小さいため、スペースを確保する必要があるからです。
しかし歯の大きさや歯の隙間には個人差があるため、抜歯によってスペースが余ることもあります。その結果口元が過度に引っ込み、口元が痩せて見えてしまうのです。口元や頬の皮膚がたるんで、ほうれい線や老け顔につながります。
見た目を変化させないために大切なことは、なんといっても「歯を極力抜かないこと」です。
これまで歯列矯正を長年手掛けてきましたが、第一小臼歯を抜かなければ顔が老けたりほうれい線が深くなったりすることはまずありません。
歯の隙間の問題で抜かざるを得ない場合は、顔の筋肉をトレーニングしましょう。
というのも「口輪筋」と呼ばれる、口周りの筋肉は18歳以降徐々に衰え始めます。つまり歯列矯正の有無に関わらず、40代の時点で口輪筋は廊下が進んでいるというわけです。顔や舌の筋トレを毎日行うことで、血行がよくなりほうれい線の改善につながるでしょう。
2.成人矯正をおすすめする理由
2-1.歯の健康を守れる
歯科医師の立場から言えば、歯列矯正を行う一番の価値は「歯の健康を守れる」という点です。
2016年度の学校保健統計調査によると、12歳のむし歯(治療済み含む)の本数平均は0.2本という状況です。30年前の調査ではなんと5本という結果になっており、現代は子どものむし歯が格段に減っていることがわかります。
30年前で12歳というと、ちょうど今40代を超えたあたりの年代の方々ですよね。当てはまるという方は、自分の口の中をチェックしてみましょう。きっと大半の方に、治療済みの歯が5本以上あるはずです。
セラミックや銀歯など色々な素材が使用されていることと思いますが、果たしてこれらの歯は死ぬまで維持できるのでしょうか。
実は40代後半ごろから、徐々に歯を失っていきます。60代に突入すると平均4.6本の歯を失うこととなり、下の6歳臼歯(前から数えて6番目の歯)に至っては50歳で25%もの方が失くしています。年齢を重ねるにつれて、奥歯などの大きな歯から順に失っていくでしょう。
この状況を変えられるかもしれないのが、歯列矯正です。
倒れた歯を真っ直ぐに起こしたり咬合を改善させたりすることで、失いかけた歯を守ることができます。例えば開咬(オープンバイト)で奥歯が前方へ倒れていた場合、歯列を整えることで噛み合わせがよくなります。
このように歯列矯正が、歯の寿命を延ばすことにつながるのです。
見た目がよくなるだけでなく、機能性が向上するのは大きな魅力ではないでしょうか。
2-2.自分の笑顔に自信が持てる
美しい笑顔の方に、好印象を抱くことはありませんか?
歯並びが乱れていると自分自身の笑顔に自信が持てず、うまく笑えない方が多いようです。コロナでマスク生活が定着していますが、緩和されつつある今でも手放せない方がいるのだとか。
口元にコンプレックスがある方にとって、マスク生活は悪いものではないのかもしれません。しかし口元が見えないことで、コミュニケーションに支障をきたす場合もあります。
40代を過ぎると顔のシミやくすみが気になり始めるので、若いイメージを与えるためには目や歯といった色の明るい部位の印象がより重要になります。
その場しのぎで隠すのではなく、歯列矯正で自信のある美しい笑顔を手に入れましょう。
あわせて、表情筋のトレーニングを行うとなおよいですね。体の筋肉と同様、顔の筋肉も使わなければ少しずつ衰えます。自然な笑顔には、表情筋のトレーニングが欠かせないのです。
顔の筋肉を動かすことで、口だけではなく頬で自然に笑えるようになります。血行がよくなり、くすみの改善にもつながるでしょう。
歯列矯正で自分に自信を持ち、美しい笑顔でポジティブな気持ちになりませんか?
口元にコンプレックスがある方は、そんな自分の姿をぜひ想像してみてください。自分自身はもちろん、周囲の人のことも幸せにできるはずです。
3.まとめ
成人矯正には、老けて見えるようになるというデメリットも挙げられます。しかしそのリスクは、第一小臼歯の抜歯をしないことで回避できるでしょう。表情筋のトレーニングを行うことも、重要なポイントです。
歯列矯正を行えば、自分自身の歯を長持ちさせつつ美しい笑顔を手に入れられます。
歯並びや咬合が気になっているという方は、一度かかりつけ医へ相談してみてください。