「口を開けると顎が痛い」「カクカク音がする」といった顎関節症の症状にお悩みの方で、同時に歯並びも治したいと考えている方は少なくありません。
特に、噛み合わせの悪さが顎関節症の原因になっているのではないかと疑い、矯正治療を検討するケースは非常に多く見受けられます。
しかし、「顎の治療と歯列矯正、どちらを先に始めるべきか?」と迷ってしまうことでしょう。
先に結論をお伝えすると、痛みや口が開かない症状があるうちは、顎関節症の治療を先に進めるのが基本です。
顎関節症の症状がある状態で無理に矯正を進めると、かえって症状を悪化させてしまう危険性も潜んでいます。
本記事では、顎関節症と歯列矯正の優先順位や、症状別の判断基準、同時に治療を進める場合の考え方、そして矯正によって顎関節症が悪化するリスクについて詳しく解説します。
保険適用や費用、治療期間といった疑問についても、日本顎関節学会と日本矯正歯科学会が公開している情報をもとに整理しました。
ご自身の症状と照らし合わせながら、最適な治療の進め方を見つけていきましょう。
顎関節症と歯列矯正はどっちが先?

結論から言うと、現在の顎関節症の症状の重さによって優先順位は異なりますが、基本的には顎関節症の治療を優先するケースが一般的です。
顎の関節は、食事や会話など日常生活で常に動かす重要な部分であり、ここが不安定な状態では安全な矯正治療を行うことが難しいためです。
なお、矯正で顔立ちがどう変わるのかが気になる方は、歯列矯正で鼻の形は変わる?高くなる・広がると言われる理由と本当の影響を解説もあわせてご覧ください。
この考え方は、学会が公開している情報とも一致します。
日本顎関節学会は、噛み合わせの治療について「発症後早期には行いません」と明記しています(日本顎関節学会「その他の疑問に対して」)。
発症して間もない時期は、顎関節や咀嚼筋の炎症、関節円板のずれによって噛み合わせ自体が変化していることがあるためです。
その状態で噛み合わせを変えてしまうと、症状が落ち着いて顎の位置が戻ったときに、今度は噛み合わせが合わなくなる可能性があります。
ご相談で特に多いのは、「顎が痛いのに、矯正の相談に行ってもよいのだろうか」という迷いです。
診療の現場では、相談や検査を受ける段階と、実際に歯を動かし始める段階は別のものとして考えます。
相談を先延ばしにする必要はなく、順番を決めるための検査は早い段階で受けておいたほうが判断しやすくなります。
優先順位の判断は、次の3点に分けて考えると迷いにくくなります。
- ・顎関節症の治療を先に進めるのが基本とされる理由
- ・症状が軽いときに矯正と並行できる条件
- ・自己判断で矯正を急ぐことの危険性
順に見ていきましょう。
「顎関節症の治療を優先」するケースが多い
顎関節に痛みがあったり、口が大きく開けられなかったりする状態(急性期)で矯正治療を始めると、顎にさらなる負担をかけて症状を悪化させる危険があります。
矯正治療では歯を動かすために持続的な力をかけるため、それが顎関節への新たなストレスとなってしまうのです。
まずは顎の炎症や痛みを抑える治療を優先します。
スプリント(マウスピース)を用いた治療や、生活習慣の改善指導などを通じて、顎関節の負担を軽減し、症状が安定するのを待つことが最優先のステップとなります。
学会が早期に噛み合わせを触らないとしているのは、この時期の噛み合わせが本来の状態ではない可能性があるからです。
炎症が治まると顎の位置が変わることがあり、痛みがあるうちに歯並びを整えても、症状が落ち着いた後に噛み合わせが合わなくなることがあります。
順番を守ることは遠回りに見えて、やり直しを避けるための近道になります。
軽度なら矯正と並行できる場合もある
「顎関節症と歯列矯正は同時にできますか」という疑問は、多くの方が気にされる点です。
痛みはなく、口を開けた時に「カクッ」と音が鳴る程度の軽度な症状であれば、顎関節症の経過を観察しながら歯列矯正をスタートできる場合もあります。
このようなケースでは、矯正治療を進めることで噛み合わせが改善し、結果的に顎関節への負担が減ることも期待できます。
並行して進められるかどうかを見極めるとき、実務では次のような点を確認します。
- ・顎や周囲の筋肉に痛みがない
- ・口の開き方に制限がなく、食事や会話に支障がない
- ・音(関節雑音)はあるが、痛みを伴っていない
- ・症状が変化したときに、すぐ相談できる体制がある
これらに当てはまる場合でも、適応の可否は精密検査による診断が必要です。
ただし、治療中に症状が悪化しないか、定期的に顎関節の状態をチェックしながら慎重に進める必要があります。
少しでも違和感が強くなった場合は、すぐに担当医に相談できる体制を整えておくことが重要です。
自己判断は危険
顎関節症の原因は、噛み合わせの悪さだけでなく、ストレスや食いしばり、姿勢など多岐にわたります。
そのため、「歯並びさえ治せば顎関節症も治るはず」と自己判断で矯正を急ぐのは非常に危険です。
必ず歯科医師の診察を受け、顎関節症の根本的な原因を突き止めた上で、適切な治療計画を立ててもらいましょう。
多角的な視点からのアプローチが、安全で確実な治療へと繋がります。
自己判断のもう1つのリスクは、治療の途中で通院が止まってしまうことです。
顎の不調を抱えたまま矯正を始めると、痛みや不安から足が遠のき、装置をつけたまま放置してしまうことがあります。
中断してしまった場合のリスクと再開の方法は、矯正治療に途中で行かなくなった場合のリスクとは?再開方法や中断しない方法で詳しく解説しています。
顎関節症の症状別治療の優先順位

「自分の症状は、先に顎を治すべきレベルなのだろうか」と迷う方は少なくありません。
判断の手がかりになるのが、学会が示している症状と病型の整理です。
日本顎関節学会は、代表的な症状として「あごが痛む(顎関節痛・咀嚼筋痛)」「口が開かない(開口障害)」「あごを動かすと音がする(顎関節雑音)」の3つを挙げ、病型を4つに分類しています(日本顎関節学会「顎関節症とは」)。
同学会は、多くは適切な診察や検査を受け、歯科医師による標準的な治療と自己管理(セルフケア)によって快方に向かうことが知られている、とも説明しています。
顎関節症の症状レベルに応じた、具体的な治療の進め方を見ていきましょう。
ご自身の症状がどの段階にあるのかを把握する目安として参考にしてください。
| 症状の段階 | 主なサイン | 治療の進め方の目安 |
|---|---|---|
| 重い(急性期) | 強い痛みがある・指2本分ほど口が開かない | 顎関節症の治療を先に行う |
| 軽い | 音や軽い違和感のみ | 矯正の先行や並行を検討できる |
| 重症 | 口が開かない状態が続く・顎が外れる・顎のズレやロック症状 | 口腔外科での対応を優先する |
症状の段階ごとの考え方を、次の順に確認します。
- ・痛みや口が開かない症状があるとき
- ・音や違和感だけのとき
- ・ロック症状など重症のとき
まずは重い症状のケースから見ていきます。
痛み・開口障害がある場合は先に治療
顎を動かすと強い痛みがある、指が縦に2本分も入らないほど口が開かないといった重い症状がある場合は、スプリント(マウスピース)療法やお薬で症状を落ち着かせる治療を最優先で行います。
この状態で無理に口を開けて矯正器具を装着することは、患者様にとっても大きな苦痛となります。
まずは日常生活に支障が出ないレベルまで顎の機能を回復させることが第一目標です。
痛みが引き、口がスムーズに開けられるようになってから、改めて矯正治療の計画を立て直します。
痛みが強いときほど様子を見ようとして受診が遅れがちですが、学会も適切な診察と検査を受けることを前提に治療の見通しを示しています。
食事がとりにくい、口が開かずに会話がしづらいという段階であれば、矯正の相談と合わせて顎の状態を診てもらってください。
違和感・軽度のクリック音のみの場合
痛みや開口障害がなく、関節雑音(クリック音)や軽い違和感のみの場合は、矯正治療を先行、あるいは並行して行うことが可能なケースが多いです。
日常生活に大きな支障がないレベルであれば、矯正治療による噛み合わせの改善がプラスに働く可能性も十分にあります。
しかし、治療中に音が大きくなったり、痛みに変わったりした場合は、直ちに矯正治療のペースを落とすか、一時中断して顎関節のケアを優先する柔軟な対応が求められます。
判断を任せきりにせず、通院のたびに顎の状態を伝えておくと、変化に早く気づけます。
歯ぎしりや食いしばり、頬杖といった生活習慣が重なっている場合は、その改善を並行して進めることも大切です。
顎のズレやロック症状がある重症ケース
顎の関節円板が大きくズレたまま元に戻らず、口が開かなくなる(ロック症状)など、重症化している場合は、一般的な歯科医院での対応が難しくなります。
口腔外科での専門的な治療や、場合によっては外科手術が必要になることもあります。
このような重症ケースでは、顎関節の構造的な問題を解決しない限り、安全に矯正治療を進めることは難しいとされています。
まずは口腔外科などの医療機関での治療に専念し、顎関節の機能が根本的に回復するのを待つ必要があります。
どこに相談すればよいか分からないときは、かかりつけの歯科医院に現在の症状を伝え、口腔外科のある病院への紹介を相談する方法があります。
矯正の相談先を探す前に、顎の状態を診断できる窓口につながることが先決です。
歯列矯正で顎関節症は治るのか?

歯並びを整えれば顎の不調も解消するという期待は、自然なものです。
ただし、学会が示す顎関節症の主な治療に、矯正治療は含まれていません。
日本顎関節学会が挙げている主な治療は、生活指導・理学療法・薬物療法・アプライアンス療法(スプリントなど)の4つです(日本顎関節学会「顎関節症の主な治療は」)。
矯正治療は、顎関節症そのものの標準的な治療として位置づけられているわけではなく、噛み合わせという要因に働きかける手段の1つと考えるのが実際的です。
「歯並びを治せば顎関節症も治る」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。
矯正治療が顎関節症に与える影響は、患者様の状態によって大きく異なります。
歯並びの乱れがあると、特定の歯だけに強い力がかかったり、顎を本来とは違う位置で動かす癖がついたりすることがあります。
こうした状態が続くと顎関節や周囲の筋肉に負担が積み重なるため、歯並びは顎関節症に関わる要因の1つと考えられています。
一方で、歯並びが整っている方でも顎関節症になることはあり、歯並びだけで説明できる病気ではありません。
矯正治療が口もとの見た目に与える影響については、歯列矯正でほうれい線は消える?後悔しないためのポイントも解説!でも触れています。
ここでは次の3点を整理します。
- ・噛み合わせの改善が症状の軽減につながる場合
- ・反対に負担が増える仕組み
- ・「矯正すれば治る」という受け止め方の落とし穴
それぞれ具体的に見ていきます。
噛み合わせ改善で症状が軽減するケース
顎関節症の主な原因が「悪い噛み合わせ」にある場合、矯正治療によって噛み合わせが正しい位置に整うことで、顎への負担が減り、結果的に顎関節症の症状が改善することは十分にあり得ます。
特定の歯に過度な力がかかっていた状態が解消され、顎関節周辺の筋肉の緊張が解けるためです。
特に、前歯が噛み合わない開咬(オープンバイト)や、上の前歯が下の前歯を深く覆う過蓋咬合(ディープバイト)などの不正咬合を治療することで、顎関節の症状が軽くなったという報告もあります。
ただし、噛み合わせが要因のどこまでを占めているかは人によって異なり、適応の可否は精密検査による診断が必要です。
逆に悪化するケースがある理由
一方で、矯正治療中は歯が動くことで一時的に噛み合わせが不安定になります。
この不安定な状態が顎関節に新たなストレスを与え、症状を悪化させてしまうケースも存在します。
また、矯正装置による違和感やストレスから、無意識のうちに歯を食いしばってしまい、それが顎関節への負担を増大させることもあります。
治療中は常に顎関節の状態に気を配る必要があります。
どのような進め方をすると悪化しやすいのかは、次の章で具体的に整理します。
「矯正すれば治る」という誤解
顎関節症は多因子疾患(複数の原因が絡み合って発症する病気)です。
歯並びだけを治しても、歯ぎしりやストレス、頬杖などの悪習癖といった根本原因が解決されないままでは、症状が繰り返しやすくなるとされています。
矯正治療はあくまで噛み合わせという一つの要因を改善する手段に過ぎません。
日本顎関節学会も、顎関節や咀嚼筋の傷害だけでは説明のつかない痛みがあり、心理的あるいは社会的なストレスが関係している方もいると説明しています(日本顎関節学会「あごが痛い・口が開かない・音がするのはなぜ」)。
顎関節症を根本から治すためには、生活習慣の見直しやストレス管理など、総合的なアプローチが不可欠であることを理解しておきましょう。
矯正治療と顔まわりの変化の関係については、歯列矯正で頬がこけるのはなぜ?抜歯との関係・治らないケース・改善方法まで解説でも解説しています。
歯列矯正で顎関節症が悪化するケース

歯列矯正は顎関節症の改善に役立つ場合がある一方で、治療の進め方によっては症状が悪化するリスクもあります。
特に、急激な噛み合わせの変化や不適切な治療計画が原因となるケースが報告されています。
顎関節症をお持ちの方が矯正治療を検討する際には、悪化するリスクを正しく理解した上で、歯科医師と十分に相談することが重要です。
学会も同じ点に注意を促しています。
日本顎関節学会は、治療を繰り返しても改善しない場合について「咬み合わせの調整などがきっかけで悪化する事があります」と説明しています(日本顎関節学会「治療を繰り返しても治らない方へ」)。
矯正治療も噛み合わせを変える治療である以上、同じ注意が当てはまります。
悪化を避けるために、治療を始める前に次の点を確認しておいてください。
- ・治療前に顎関節の状態を検査してもらえるか
- ・噛み合わせを短期間で大きく変える計画になっていないか
- ・痛みが出たときに計画を調整してもらえるか
- ・顎の症状が強くなった場合に中断や再検討ができるか
悪化しやすい3つのパターンを、順に見ていきます。
急激な噛み合わせ変化による負担
歯を大きく動かしたり、噛み合わせの高さを急に変えたりすると、顎の関節や筋肉がその変化に適応できず、痛みや炎症を引き起こすことがあります。
特に、短期間で劇的な変化を求めるような無理な治療計画は、顎関節にとって非常に危険です。
顎関節が新しい噛み合わせに順応できるよう、時間をかけて少しずつ歯を動かしていく慎重なアプローチが求められます。
矯正治療そのものにも痛みは伴いますが、多くは装置をつけ始めた直後の一時的なものです。
岐阜駅前歯科クリニック・矯正歯科では、装置をつけ始めた直後の違和感はおよそ1週間で徐々に和らぐケースが大半としており、原因の分かる痛みには先回りして負担を軽くする対応が可能としています。
痛みへの考え方は矯正治療の痛み、抜歯などの考え方で詳しく紹介しています。
一方で、顎の関節そのものが痛む、口が開きにくくなる、痛みが1週間以上続いて強まるといった変化は、通常の経過とは異なるサインと考えられます。
気になる変化があれば、我慢せずに担当の歯科医師へ伝えてください。
もともとの顎関節の状態が不安定な場合
潜在的に顎関節が弱い方や、過去に重い顎関節症を患ったことがある方は、矯正治療のわずかな刺激でも症状が再発・悪化しやすい傾向があります。
このような方は、治療開始前に徹底的な顎関節の検査を行い、リスクを十分に評価する必要があります。
治療中も、通常よりも頻繁に顎関節の状態をモニタリングし、少しでも異常を感じたらすぐに対応できる体制を整えておくことが重要です。
次のような経験がある方は、矯正の相談時に必ず伝えてください。
- ・過去に口が開かなくなったことがある
- ・顎の音が長期間続いている
- ・歯ぎしりや食いしばりを指摘されたことがある
- ・顎の痛みで治療を受けたことがある
- ・肩こりや頭痛を伴うことが多い
治療計画が不十分なケース
顎関節の状態を十分に検査・考慮せずに、見た目の歯並びだけを優先した治療計画を立ててしまうと、治療中や治療後に顎のトラブルを抱えるリスクが高まります。
美しい歯並びを手に入れても、顎が痛くて食事ができないのでは本末転倒です。
セファログラム(頭部X線規格写真)やCTスキャンなどを用いて、顎関節の骨格的な構造までしっかりと分析し、機能面と審美面の両方を満たす治療計画を立ててくれる歯科医院を選ぶことが大切です。
岐阜駅前歯科クリニック・矯正歯科では、矯正治療の前に丁寧な検査と診断を行い、CT撮影を採用したうえで、できるだけ健康な歯を抜かずに治療できる計画を立てています。
どの進め方が適しているかは一人ひとり異なり、適応の可否は精密検査による診断が必要です。
矯正を始めてから顎の痛みが強くなり、治療を続けるか迷ってしまう方は少なくありません。
今の状態で矯正を進めてよいのか、先に顎の治療が必要なのかは、ご自身では判断しにくい部分です。
医療法人スマイルの相談窓口では、噛み合わせ全体の状態から治療の進め方を整理できる「3分でわかる治療適性チェック」をご用意しています。
判断に迷っている段階でこそ、一度ご確認ください。
顎関節症と歯列矯正を同時に行う場合の考え方
症状を抱えたまま矯正を進める場合、押さえるべき手順は大きく3つに分けられます。
症状をコントロールしながら、安全に矯正治療を進めるためのアプローチをご紹介します。
専門的な知識と技術を持った歯科医師のサポートが不可欠です。
日本顎関節学会は歯科医師向けに顎関節症治療の指針を公開しています。
自己流で順番を決めるのではなく、こうした指針に沿って進められる医院を選ぶことが安全につながります。
具体的には、次の内容を順に確認していきます。
- ・顎の負担を減らすスプリント治療との組み合わせ
- ・初期治療から矯正開始までの段階的な流れ
- ・矯正歯科と口腔外科が連携する体制の重要性
以下で詳しく説明します。
スプリント治療と矯正の併用
顎関節の負担を軽減するスプリント(顎関節症用のマウスピース)を使用しながら、顎の安定した位置(中心位)を探り、その位置を基準にして矯正治療を進める方法があります。
これにより、顎関節への負担を最小限に抑えながら歯を動かすことが可能になります。
スプリントで顎の筋肉の緊張を解きほぐし、本来の正しい顎の位置を見つけ出すことは、顎関節症を伴う矯正治療において非常に重要なプロセスです。
スプリントは歯を動かす装置ではなく、就寝中の歯ぎしりや食いしばりによる負担を和らげ、顎の位置を確認するための装置です。
使用する期間や併用の可否は症状によって変わるため、適応の可否は精密検査による診断が必要です。
段階的に進める治療フロー
まずは顎関節の症状を落ち着かせる初期治療を行い、顎が安定したことを確認してから、慎重に歯を動かす矯正治療へと移行する段階的なアプローチが最も安全です。
焦らず、一つ一つのステップを確実にクリアしていくことが成功の鍵となります。
治療期間は通常よりも長くなる可能性がありますが、顎関節の健康を守るためには必要な時間であると理解し、根気よく治療に取り組む姿勢が大切です。
実際の流れは、次のように進みます。
- ・1つ目:問診と検査で顎関節の状態と噛み合わせを確認する
- ・2つ目:生活指導やスプリントなどで顎の症状を落ち着かせる
- ・3つ目:症状が安定したことを確認する
- ・4つ目:改めて精密検査を行い、矯正の治療計画を立てる
- ・5つ目:経過を見ながら歯を動かし、定期的に顎の状態を確認する
岐阜駅前歯科クリニック・矯正歯科では、本格的な矯正で装置をつけている期間の目安を2〜3年程度、前歯の部分的な矯正であれば半年から1年程度としています。
装置を外した後も、後戻りを防ぐための保定期間が必要です。
期間の考え方は矯正治療の治療期間についてにまとめています。
矯正歯科と口腔外科の連携が重要な理由
顎関節症と歯列矯正の両方に深い知識を持つ歯科医師、あるいは矯正歯科と口腔外科が緊密に連携できる医療機関を選ぶことが、トラブルを防ぐために非常に重要です。
複雑な症状を抱える患者様に対しては、複数の診療科の歯科医師が連携して治療にあたる体制が理想的です。
医院選びの際は、顎関節症への対応方針や、他科との連携体制についてもしっかりと確認するようにしましょう。
初回のカウンセリングでは、次の点を質問してみてください。
- ・矯正を始める前に顎関節の状態を検査してくれるか
- ・症状が出たときに計画を見直す方針を説明してくれるか
- ・口腔外科など他の診療科と連携できる体制があるか
- ・治療の期間と費用を書面で示してくれるか
医院選びの考え方は、インビザラインを始めたいけど不安がある方へ!岐阜市近郊で通いやすくて安心できる歯科医院の選び方とは?でも紹介しています。
噛み合わせの不調は、歯を失った部分の影響で起きていることもあります。
奥歯を失ったまま放置していると、残った歯に力が集中して噛み合わせのバランスが崩れることがあります。
顎の不調と歯を失った部分の治療は切り離せないため、噛み合わせ全体を見たうえで治療の順番を決める必要があります。
医療法人スマイルの相談窓口では、噛み合わせ全体のご相談を受け付けており、実際の症例と費用例をご覧いただけます。
どの治療にどれくらいの費用がかかるのかを検討の早い段階で把握しておくと、選択を誤りにくくなります。
顎関節症で歯列矯正ができないケースはある?
「できない」と言われた場合でも、その多くは「今はできない」という意味です。
重度の顎関節症で、関節の骨が変形・吸収してしまっている場合や、口が全く開かず治療器具が入らない場合は、すぐに矯正治療を行うことはできません。
このような状態で無理に治療を進めると、取り返しのつかないダメージを顎関節に与えてしまう可能性があります。
まずは口腔外科での専門的な治療や手術によって顎の機能を回復させることが前提となります。
顎関節の機能が十分に回復し、安全に矯正治療が行えると判断されてから、改めて治療計画を立てることになります。
矯正治療をすぐに始められないと判断されやすいのは、次のような状態です。
- ・口が指2本分ほど開かず、装置の装着や型取りが難しい
- ・関節の骨の変形が進んでいる
- ・強い痛みが続き、日常生活に支障が出ている
- ・顎が外れたり閉じなくなったりを繰り返している
ただし、これらは矯正そのものを諦めるという意味ではありません。
初期治療で顎の症状が落ち着けば、改めて検査を受けたうえで矯正の計画を立て直せる場合が多くあります。
「できない」と言われた時点で終わりにせず、どの状態になれば始められるのかを確認しておくと、次の一手が見えやすくなります。
顎関節症と歯列矯正でよくある質問

実際に検索されている質問のうち、ここまでで触れきれなかったものを5つ取り上げます。
保険や費用、期間、マウスピース矯正の可否など、治療の判断に直結する内容です。
Q1.顎関節症の歯列矯正は保険適用になりますか?
顎関節症そのものの治療と、歯並びを整える矯正治療は分けて考える必要があります。
日本顎関節学会は、顎関節症について基本的には公的医療保険の範囲内で治療を受けられると説明しています。
一方、歯並びを整える目的の矯正治療は原則として自費診療です。
矯正治療で保険が使えるのは、日本矯正歯科学会が示す次の3つの区分に限られます。
- ・厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
- ・前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)
- ・顎変形症(顎離断等の手術を必要とするもの)の手術前後の矯正歯科治療
さらに、保険で矯正治療を受けられるのは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長に届け出た医療機関に限られます。
「顎関節症だから矯正に保険が使える」わけではない点にご注意ください。
費用は治療内容によって変わりますので、料金のページをご確認のうえ、詳しくはカウンセリングでご相談ください。
Q2.歯列矯正で顎関節症は治りますか?
噛み合わせが要因の1つになっている場合は症状が軽くなることがありますが、矯正治療は顎関節症の治療そのものではありません。
日本顎関節学会が挙げる主な治療は、生活指導・理学療法・薬物療法・アプライアンス療法の4つです。
まずはこれらの治療で症状を落ち着かせ、そのうえで歯並びの改善を検討する順序が基本になります。
Q3.顎関節症だと歯列矯正はできないのですか?
症状が落ち着いていれば、多くの場合は進められます。
始められないのは、関節の変形が進んでいる場合や、口が開かず装置を装着できない場合などです。
その場合も顎の状態が回復すれば計画を立て直せますので、まずは今の状態を検査で確認することから始めてください。
Q4.マウスピース矯正なら顎関節症でも治療できますか?
装置の種類だけで可否が決まるわけではなく、判断の基準は現在の顎の状態です。
マウスピース型の装置は取り外せる一方で、決められた装着時間を守れないと計画どおりに歯が動かず、治療期間が延びることがあります。
顎に症状がある方は、装置の種類よりも先に顎関節の状態を検査で確認することが大切で、適応の可否は精密検査による診断が必要です。
マウスピース矯正の内容はインビザライン、期間の目安はインビザライン矯正の治療期間は平均どれくらい?通院回数や期間を短くする方法で解説しています。
Q5.顎関節症の治療と矯正で、どれくらいの期間がかかりますか?
日本顎関節学会は、初期治療について「症状の消失と機能の回復は、おおよそ1か月から3か月程度」としています(日本顎関節学会が公開している患者向けの解説)。
その後に矯正治療の期間が加わるため、全体の見通しは初期治療の期間に矯正の期間を足して考えます。
矯正の期間は装置の種類や動かす歯の本数によって変わり、症状の経過によっては一時的に治療を止める期間が生じることもあります。
想定より長引く場合の理由は、歯列矯正が5年かかるのは異常?長期化する理由・終わらない原因・対処法を解説で解説しています。
顎関節症と歯列矯正まとめ

顎関節症と歯列矯正のどちらを優先すべきかは、現在の症状の重さによって異なります。
痛みや開口障害がある場合は、必ず顎関節症の治療を優先してください。
焦って矯正治療を始めることは、症状を悪化させる大きなリスクを伴います。
「矯正をすれば顎関節症も治る」と安易に考えるのは危険です。
顎関節症は様々な要因が絡み合って発症する複雑な疾患であり、多角的なアプローチが必要です。
顎関節の状態を正確に診断し、無理のない治療計画を立ててくれる信頼できる歯科医院に相談し、安全に美しい歯並びと健康な顎を目指しましょう。
ご自身の症状に不安がある方は、まずは歯科医院のカウンセリングを受けることをお勧めします。
岐阜駅前歯科クリニック・矯正歯科は、JR岐阜駅から徒歩2分の場所で矯正治療を行っています。
矯正治療の前には丁寧な検査と診断を行い、CT撮影を採用したうえで治療計画を立てています。
初診の無料カウンセリングも実施していますので、「矯正を始めてよいか迷っている」「歯並びも一緒に治したい」「どこに相談すればよいか分からない」という段階でご利用ください。
当院は、岐阜市のほか名古屋市の名駅・栄、愛知県小牧市で医院を運営するグループの一員です。
グループ全体の診療体制は医療法人スマイル公式サイトでご覧いただけます。
院長の尾崎 裕は1994年に愛知学院大学歯学部を卒業し、2019年から当院の院長を務めています。
理事長の尾崎 隆は1989年に歯科医師国家資格を取得し、2020年に医療法人スマイルを設立しました。
診療時間や道順は岐阜駅前歯科クリニック・矯正歯科のアクセス・診療時間はこちらからご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。
症状の程度や治療の可否については、必ず歯科医師の診察を受けたうえでご判断ください。
顎の状態を診ずに歯並びだけを見て計画を立てる医院を選んでしまうと、後から取り戻すのに時間がかかります。
医院選びで確認しておきたい点をまとめた「失敗しない医院選びのチェックリスト7項目」を、下のご案内からご確認ください。
【この記事の監修者】
医療法人スマイル 理事長 尾崎 隆(歯科医師)
1989年歯科医師国家資格取得。1999年スマイル矯正歯科(現・スマイル歯科クリニック・矯正歯科)開設。2013年名駅歯科クリニック・矯正歯科、2018年岐阜駅前歯科クリニック・矯正歯科、アルティメイト栄歯科・矯正歯科を開設。2020年医療法人スマイル設立、理事長就任。
資格・研修歴:USA OBI LEVEL4/MALO CLINIC Educationコース修了(All-on-4・インプラント)/マウスピース矯正・インビザライン認定医

















