「オールオンフォー(All-on-4)治療は歯茎なしでもできるの?歯茎ありとなしの違いを知りたい」という疑問がある方もいるのではないでしょうか。
オールオンフォー(All-on-4)治療は歯茎なしでも実施することは可能ですが、審美性の低下や笑顔への違和感など、歯茎ありタイプと比較するとデメリットが目立ちます。
しかし、歯茎なしタイプにしかないメリットがあるのも事実です。
治療で失敗しないためには、歯茎と顎骨の退縮進行度や笑顔時の歯の見え方などを総合的に評価することが大切です。
この記事では、オールオンフォー(All-on-4)治療における歯茎なしタイプの特徴やメリット・デメリット、判断基準、失敗しないポイントについて解説します。
オールオンフォー(All-on-4)治療は歯茎なしでもできる
結論として、オールオンフォー(All-on-4)治療は歯茎なしでも実施することは可能です。
この治療法では人工の歯茎部分を作らず、歯のみを製作するため、メンテナンスが簡素化されます。
ただし、歯茎なしタイプが適用できるかどうかは患者さまの口腔内の状態により大きく左右されます。
十分な歯肉の厚みと健康状態が必要となり、特に前歯部では審美性が重要視されるため、歯肉のラインが美しく整っていることが前提条件となる点には注意が必要です。
また、オールオンフォー(All-on-4)治療を歯茎なしで行うと、歯が長く見えて審美性の面で課題が生じてしまいます。
歯茎なしタイプを選択する場合は、事前の詳細な検査と歯科医師との十分な相談が必要です。
オールオンフォー(All-on-4)の基本構造・歯茎の役割
オールオンフォー(All-on-4)治療における人工歯の構造は、患者さまの状態や希望により歯茎部分の有無を選択できます。以下、オールオンフォー(All-on-4)の基本構造や歯茎の役割を詳しく解説します。
オールオンフォー(All-on-4)の仕組み
オールオンフォー(All-on-4)は、4本のインプラントで片顎全体の人工歯を支える治療法です。前歯部に2本、奥歯部に角度をつけて2本のインプラントを埋入する仕組みです。
インプラントの上に連結された人工歯を装着することで、全顎の機能を回復させることができ、天然歯に近い咀嚼力と安定性を取り戻すことが期待できます。
患者さまの口腔内の状態に応じて、歯の部分のみのタイプと歯茎部分も含むタイプから選択できます。
歯茎部分の役割
歯茎部分を含む人工歯では、失われた歯肉のボリュームを人工的に補うことで、口元の自然な膨らみを回復させます。
歯肉が大幅に失われている場合、歯茎部分により唇のサポートを行い若々しい口元を取り戻します。
また、発音時の空気の流れをコントロールし、より自然で明瞭な発音を支援することも重要な役割の1つです。特にサ行やタ行の発音改善に大きく貢献します。
ただし、歯茎部分があることで清掃が複雑になります。
メンテナンスに時間と手間がかかる場合もあるため、患者さまの状態や希望を総合的に考慮して最適なタイプを選択することが重要です。
総入れ歯との違い
オールオンフォー(All-on-4)と総入れ歯の大きな違いは、固定方法と安定性にあります。
総入れ歯は歯茎に吸着させて固定するため、どうしても動きやすく外れやすいという問題があります。
一方、オールオンフォー(All-on-4)は4本のインプラントでしっかりと固定されているため天然歯に近い安定性を実現でき、食事中に外れる心配もありません。
歯茎なしタイプのオールオンフォー(All-on-4)では特に清掃性に優れ、総入れ歯のような取り外しての清掃も不要です。
しかし、インプラント周囲炎のリスクがある点や、天然歯と同様のケアが必要であることを考慮しましょう。
保険適用外で費用が高額になりやすい難点もあるため、患者さまの状況や目的に合わせて選択するようにしましょう。
歯茎なしオールオンフォー(All-on-4)のメリット
歯茎部分を含まないオールオンフォー(All-on-4)治療には、従来のタイプにはない独特の利点があります。以下、歯茎なしの主要な利点を3つ紹介します。
費用が少し安くなる
歯茎部分を製作しないため、材料費や技工料を削減できます。費用を少しでも安く抑えたい方には有効な選択肢となるでしょう。
歯茎なしタイプでは、人工歯茎の色調調整や形態修正が不要となり技工士の作業時間が短縮され、その分のコストカットが患者さまの負担軽減に直結します。
ただし、費用削減の幅は使用する材料や医院により異なり、大幅な減額は期待できません。
それでも高額なオールオンフォー(All-on-4)治療における数万円から十数万円の削減は、患者さまの経済的負担の軽減に貢献するでしょう。
なお、治療の詳細な費用については以下の記事で解説しています。
メンテナンス箇所が減る
歯茎部分がないことで日常的な清掃箇所が限定され、メンテナンスが格段に簡単になります。
複雑な凹凸がないため歯ブラシでの清掃が容易になり、特に高齢の患者さまにとっては大きなメリットとなるでしょう。
また、歯科衛生士による専門的なクリーニングでも清掃箇所が限定されるため時間短縮に繋がり、メンテナンス費用の軽減効果にも期待できます。
汚れが溜まりづらくなる
人工歯茎と天然歯肉の境界部分がないため、細菌や食べカスが溜まりづらくなります。
歯茎ありタイプでは、人工歯茎の内側や境界部分に汚れが蓄積しやすく、細菌の温床となりやすいという問題がありますが、歯茎なしタイプではこの問題を解決できます。
口臭の原因となる細菌の繁殖も抑制され、清潔な口腔環境を維持しやすくなる点は大きなメリットです。
しかし、人工歯に汚れが溜まる点は変わらないため、毎日のケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。
特に歯周病のリスクが高い患者さまは毎日のケアを徹底することで、長期的な口腔健康の維持に大きく貢献します。
歯茎なしオールオンフォー(All-on-4)のデメリット
歯茎部分を含まないオールオンフォー(All-on-4)にはメリットがある一方で、いくつかの課題も存在します。以下、主なデメリットを3つ解説していきます。
審美性が低下する
天然の歯肉が失われている場合、歯茎なしタイプでは口元の自然な膨らみを再現することが困難です。特に唇の支えが不足している患者さまでは問題となることがあります。
例えば、歯の長さが不自然に長く見えてしまったり、笑顔や会話時に歯根部分が露出してしまったりなど、歯茎ありタイプに比べて審美性の低下が目立ちます。
前歯部では特に審美性への影響が大きく、周囲の人に不自然な印象を与えてしまう可能性があるのです。
若々しい印象の口元を取り戻したい患者さまにとって、歯茎なしタイプでは期待する審美的効果が得られない場合もあり、治療前の十分な検討が必要です。
笑顔に違和感が生まれる
自然な笑顔では歯と歯茎のバランスが重要な要素となり、歯茎なしタイプでは理想的な比率を実現できない場合があります。
歯茎が通常よりも多く見えてしまう「ガミースマイル」の逆で、歯茎が見えなさすぎる状態になることがあるのです。
大きく笑った時に歯の根元部分や金属部分が見えてしまい、不自然な印象を与える可能性があります。写真撮影や人前での笑顔に自信を持てなくなることもあるでしょう。
特に女性の患者さまにとって笑顔の美しさは重要な要素であり、治療への満足度が大きく低下してしまう可能性があります。
発音に影響を与えることがある
歯茎部分がないことで舌と歯の間の空間が変化し、特定の音の発音に支障をきたす場合があります。
人工歯茎で適切な空気の流れをコントロールしていた患者さまの場合、歯茎なしタイプに変更することで発音の明瞭さが低下する可能性があります。
職業上明瞭な発音が重要な方にとっては業務に影響を与えるリスクもあり、アナウンサーや教師などの職業では特に注意が必要です。
発音練習やリハビリテーションが必要になる場合もあるため、治療前に十分な説明を受けることが重要です。
オールオンフォー(All-on-4)の歯茎あり・なしの判断基準
歯茎部分を含むかどうかの判断は、患者さまの口腔内状態と審美的要求によって決まります。治療後の満足度を最大化するために、複数の要因を慎重に評価することが大切です。
歯茎と顎骨における退縮の進み具合
長期間の歯の欠損により歯茎と顎骨の吸収が進行している程度が、治療方針決定の最も重要な指標です。
軽度の退縮であれば、歯茎なしタイプでも自然な仕上がりが期待できるでしょう。
中等度から重度の退縮がある場合は、人工歯茎により失われたボリュームを補う必要があるため、歯茎ありタイプが適正となることが多い傾向にあります。
CT検査により骨の厚みや高さを詳細に測定し、三次元的な評価を行うことで、最適な治療方針を決定することが重要です。
退縮の程度は部位により異なることも多いため、全顎的な評価と部分的な評価の両方を行い、総合的な判断を下すことが治療成功の鍵となります。
笑ったときの歯の見え方
患者さまの笑顔の特徴と歯の露出具合を詳細に分析することで、最適な人工歯のデザインを決定することが重要です。
ハイリップラインの患者さまでは歯茎部分も含めた審美性が重要になります。
大きく笑った時に歯茎が多く見える方では、人工歯茎の色調や形態が審美性に大きく影響するため、天然歯肉との調和を図ることが必要です。
一方で、ロウリップラインの患者さまでは歯茎部分があまり見えないため、歯茎なしタイプでも十分な審美性を実現できる場合が多くあります。
写真撮影や動画による記録を行い、笑顔の動的な変化も含めて評価することで、より精密な治療方針の決定が行えます。
オールオンフォー(All-on-4)治療で失敗しないためのポイント
オールオンフォー(All-on-4)治療を成功に導くためには、治療前の準備と適切な医院選びが重要です。ここでは、失敗しないための重要ポイントを3つ紹介します。
治療前に歯周病を治しておく
残存歯に歯周病がある状態でオールオンフォー(All-on-4)治療を行うと、細菌感染によりインプラント周囲炎のリスクが高まってしまいます。
このリスクを回避するためにも、口腔内の細菌環境を改善することが治療成功の前提条件となります。
歯周病治療には数ヶ月を要する場合も多いため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要であり、歯石除去や歯周外科手術が必要になることもあるでしょう。
治療前に歯周ポケット検査などを通じて炎症や歯周病の進行度を正確に把握し、適切な前処置を行うことができます。全身の健康状態改善の観点からも事前治療は欠かせません。
治療前に喫煙をやめる
喫煙はインプラントの骨結合を著しく阻害し、治療失敗のリスクを増加させる最も重要な危険因子の1つです。
ニコチンにより血流が悪化して創傷治癒が遅延することが科学的に証明されているのです。
手術前最低2週間、できれば1ヶ月以上の禁煙が推奨されており、術後も最低3ヶ月間は禁煙を継続することが治療成功のために必要です。
もしも禁煙が難しい場合は、オールオンフォー(All-on-4)治療を延期するか、総入れ歯など別の治療に切り替えることも検討しなければなりません。
禁煙外来の利用やニコチン代替療法など専門的なサポートを活用することで、禁煙成功率を高めることが期待できます。
実績のある歯科医院を選ぶ
オールオンフォー(All-on-4)治療は高度な技術と豊富な経験を要する専門的な治療のため、十分な実績を持つ医院を選択することが不可欠です。
歯科医院を選ぶ際は、年間症例数と治療成功率を詳しく確認することが重要な判断材料となります。
国際的な認定資格を持つ医師や専門的な研修を受けた医師であれば、技術レベルの高さが期待できるでしょう。
また、最新のCT設備や高解像度のデジタルXを導入している医院では、治療精度と安全性が大幅に向上し、合併症のリスクも軽減されます。
治療後の保証制度やメンテナンス体制が充実している医院を選ぶことも重要で、万全なフォロー体制が整っている医院であれば、万が一のトラブル時も適切な対応を受けられるでしょう。
まとめ
この記事では、オールオンフォー(All-on-4)治療における歯茎なしタイプの特徴やメリット・デメリット、判断基準、失敗しないポイントについて解説しました。
歯茎なしオールオンフォー(All-on-4)は費用削減やメンテナンスの簡素化といったメリットがある一方、審美性や発音への影響というデメリットも存在するため、慎重な適応判断が必要です。
歯茎と顎骨の退縮進行度や笑顔時の歯の見え方を総合的に評価し、治療前の歯周病治療や禁煙、実績ある医院選びが成功の鍵となります。
岐阜駅前歯科クリニック・矯正歯科では、年間約500本という豊富な実績と最新設備により、患者さま一人ひとりに合わせたインプラント治療を提供しております。
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