歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療
2022.09.20更新
近年世界的に普及しているのが「歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療(TAD)」です。初めに「アンカースクリュー」と呼ばれるネジを顎骨へ埋入し、その部分を固定源として歯を動かすという治療法です。
骨へ固定されたネジに力を負担させられるため、計画通りに歯を動かしやすいという点が大きなメリットです。
中には「ネジを歯茎へ埋入する」と聞いて怖いと感じた方がいるかもしれませんが、心配はご無用です。
一体どのような治療なのか、詳しく解説します。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療とは?
TAD(Temporary Anchorage Device)と呼ばれることもある治療で、「アンカースクリュー」という小さなインプラント(ネジ)を歯茎へ埋入して移動の起点にします。
通常の歯列矯正ではワイヤーをつないで歯並びを整えていくのですが、いきなり歯に力をかけると負担が大きくなります。そのため起点となる奥歯と、移動させたい歯への負荷をうまく調整しなければなりません。失敗すると思わぬ方向へ歯が移動してしまい、治療が長引いたり期待通りの結果が得られなかったりします。
TADが誕生した背景
この方法で治療をすると、ネジの埋入部分を起点として歯が移動します。上下左右へ動かせるため、理想の歯並びを手に入れられるのです。
従来の歯列矯正では難しかった位置への移動も、容易になります。
メリット
先述した通り、幅広い症例へ適用できる上に治療の確実性が高いというメリットがあります。治療期間の短縮にもつながるでしょう。
また、必要最低限の装置のみを装着するので身体的・精神的負担がかかりません。
さらに歯列矯正では抜歯を伴うケースが多いですが、非抜歯で治療できる可能性が高いといえます。症例によっては顎骨の外科手術などが必要になりますが、アンカースクリュー(ネジ)を用いれば矯正歯科の範疇で治療ができるかもしれません。
このように、数多くのメリットが得られます。
デメリット
ネジの埋入後、口腔内が不衛生な状態になると感染症を引き起こすリスクがあります。
埋入したネジが炎症によってグラつくと、再度埋め込まなければならない可能性もあるので注意してください。
治療の手順
1.アンカースクリュー(ネジ)の植立
麻酔後にネジを埋め込み、消毒します。術後は腫れや痛みが生じるかもしれませんが、2~3日程度で治まるので安心してください。痛みが続く場合は、処方された痛み止めを飲んで安静に過ごしましょう。
2.経過観察
埋入したネジが安定するまでに、2~3ヶ月程度かかります。特に埋入して2週間ほどは安静に過ごし、その後も経過観察を行いましょう。
3.歯の移動開始
ネジの安定を確認したら、その部分を固定源として装置を取り付けます。歯の移動を開始しますが、治療中にネジが外れたり緩んだりしたときはすぐに歯科医院へ連絡してください。別の場所へ、新たなネジを埋め込むという流れになります。
4.ネジの撤去
歯が計画通りに動いたことを確認したら、埋入したネジを取り除きます。埋入時と逆回転させるだけで簡単に抜けるので、麻酔は必要がありません。痛みもなく、1週間程度で元通りになるでしょう。
固定源について
歯列矯正で歯を移動させるときは、基本的に固定源が必要です。前歯から数えて6~8番目の歯(大臼歯)を固定源にするのが一般的ですが、作用・反作用の法則を考えると固定源を動かさず歯列矯正を行うことはほぼ不可能です。
そのためヘッドギアなどを使用して、固定源とする治療法も広く浸透してきました。ですが着脱可能な装置ということもあり、患者さまの協力なくしては治療が成功しません。
そこで提案したいのが、歯科矯正用アンカースクリューを用いた歯列矯正です。固定源が動く心配がないため、違和感なく歯を移動させられるのです。
患者さまの負担が減るだけでなく、歯科医師にとっても治療計画が立てやすくなるという利点があります。それが結果的に、治療の成功へとつながるでしょう。
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